FAKE‐LAKE
 ニールが帰った後、アンジェはベッドに横になったまま屋根裏に向かって話し掛けた。
「レイ」
 微かな物音もしない。反応もない。
「起きてる?」
 しんとしている。レイは眠っているのかもしれない。
 アンジェはゆっくり起き上がった。まだ少し、胸が苦しい。
「レイ」
 屋根裏部屋にあがる。
 レイは深く頭を垂れ、部屋の隅にうずくまっていた。膝を抱えた姿がいつもより小さく見える。
「来ないで」
 顔を上げずにレイは言う。突き放すようなきつい口調。
 アンジェはその言葉を無視してレイに近づいた。
「来ないでったら」
「どうして」
 二度の忠告を無視して立ち止まろうとしないアンジェに、レイは弾かれたように顔を上げて叫ぶ。
「アンジェを殺したくないから!」
 アンジェが倒れる様子を思い出したレイは頭を両手で抱え、取り乱して大声を出した。
「僕は普通じゃない! 変なんだ、おかしいんだ!!」
「レイ」
「この間のコップも僕が触ったから壊れた! 小鳥を死なせたのも僕なんだ!」
「レイ」
「髪も瞳も、体も存在もなにもかも、全部全部おかしいんだ! きっと博士の言うように人間じゃないんだよ、僕は! このままじゃアンジェを……」
 ぐい、とレイの細い手首をアンジェは掴んだ。最後まで言わせず、乱暴に引き寄せる。
「やっ……は、離せ!」
 逃げようともがく彼をぎゅっと強く抱きしめる。
「落ち着け、レイ」
「だって、アンジェが」
「大丈夫」
 ゆっくり十数えてからアンジェは腕の力を緩めた。当惑しているレイに優しく微笑みかける。
「ほら、大丈夫。生きてるだろ?」
「あ……あ、」
 アンジェは『自分』に怯えてがくがくと震えているレイの顔を両手で挟み、言い聞かせるように言った。
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