FAKE‐LAKE
「左手。少し変だろ? 機械が入ってるから右手より大きいんだ。小さい頃は左手だけが異様に大きくて気持ち悪かった」
 話しながら当時の事を思い出す。
『人間兵器にするために自分の手でアンジェをさらってきたあなたが―――』
 アンジェは深い溜息をついた。
「人間兵器にするために、僕はどこかからさらわれてきたんだって」
「人間……兵器……?」
 レイはおうむ返しにアンジェの言葉を繰り返す。
「何のためなのかは知らない。分かってるのは、僕の左腕は武器に作り替えられているって事」
「そんな……」
 レイはよほど驚いたらしい。無理もないか。見た目ではわからないから。
「僕はレイと同じなんだよ。……ああ、レイの受けた扱いは酷すぎるからそこは違うけど」
 そう言ってアンジェはレイを見た。
「だからもしかしたら、レイにその……特殊な力があるのも、僕の左腕と同じ理由なんじゃないかな」
 アンジェの言葉にレイは目を伏せた。
 しばらく、沈黙が流れる。
 アンジェは突然目覚めはじめた不思議な力に不安を抱いているレイの事を思い、レイは重い秘密を抱えながら自分を支えてくれたアンジェの気持ちを考えていた。
「……ごめん、アンジェ」
 レイは小さい声で謝った。『うらやましい』なんて言われてアンジェはどう思っただろう。
「僕……知らなくて、その」
「話してなかったんだから知らなくて当然だよ。気にしないで」
 アンジェは俯いているレイに明るく答える。ゆらりと揺れたランプの明かりに目をやり、続けた。
「悲しい繋がりだけど、僕たち出会う前からある意味兄弟だったんだね」
 レイは目をあげた。切ない意味を持つ台詞とは反対に、アンジェの表情は穏やかで優しい。
「僕、アンジェに……“お兄さん”に会えてよかった」
 思わずそう口にしていた。心から、そう感じる。
「お兄ちゃんはこんな可愛い弟がいて嬉しいよ」
「あ、“可愛い”はないよ、僕一応男の子なんだからね!」
 明るさが戻ったレイの表情にアンジェはほっとした。

 どうかこの笑顔を奪わないで。
 どうか僕たちをそっとしておいて。
 左腕を押さえながらアンジェは強く願った。
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