FAKE‐LAKE
ぽつ、と雨粒が頬を叩く。

雨か。シアナは重たい灰色の空を見つめた。

『お父さん、みたい』

レイの嬉しそうな微笑みを思い出す。

『そうだったらよかったのに……』

雨はどんどんひどくなり、シアナは地面に倒れたまま雨に打たれていた。

『そばに……いて』
『ありがとう』
『お父さんみたい』

そうだったらよかったのに――

冷たい雨に熱いものが混じる。感情を閉じ込めていた氷が溶けて流れて行く。

あの日、息子を失った日に止まった時間が動き始めた。

そうしてくれたのは、博士の残酷な虐待にも屈しない強い意志を持った少年。

劣悪な環境にありながら、感謝の言葉を口にできる純粋な心を持った彼を――

「助けてやりたい」

自然とそう口にしていた。


< 367 / 563 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop