FAKE‐LAKE
「“坊ちゃん”と親しくなってはいけない理由をさ。あの子の人懐っこい性格、お前もよく知っているはずだろう?」
 母親の言葉に反応せず、アルクは机上の鉛筆をじっと見つめていた。
 ルミカの言いたい事は分かる。同じ年頃の友人がいないニールが坊ちゃんと仲良くなりたい気持ちも分かる。それを止めなければいけないという事も分かっている。しかし。
 アルクは目を上げ、母親に返答した。
「ニールに重たい秘密を背負わせろと言うんですか」
 アルクの口調は穏やかだったが、口にした言葉は厳しかった。さすがのルミカも返す言葉が無いようで、むっすりと口をつぐんだ。
 真実を知れば、少なからずニールは動揺する。いや、動揺だけで済めばいい。アルクも彼なりにニールの事を考えて、あえて黙っているのだ。不必要に真実を知る事は、時に危険を伴う。
「ニールには面倒な事に巻き込まれて欲しくないんです」
 “坊ちゃん”の仕事をニールにさせているのも、本人がやりたいと望んだ事と依頼主からの強い希望、そして一回の配達で手に出来る収入が多いからだった。でなければ、いつ揉め事に巻き込まれるか分からない複雑な事情のある仕事を、息子同然のニールにさせたりしない。
 アルクは帳簿に目を落とし、深く溜息をついた。
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