FAKE‐LAKE
「博士、連れて来ました」
 男達に連れて来られたのは、薬品くさい空気と機械音が充満している気味の悪い部屋。レイは毎日、“博士”という人がいるこの場所に連れてこられる。
「今日は二人がかりか。ずいぶん慎重だな」
 屈強な男二人に両脇を抱えられているレイの姿を見て、博士は低い声で笑った。
「先日また脱走をはかりましたので」
 男の一人は、忌ま忌ましいと言いたげにレイを見下ろした。
「そうか、お前はそんなに痛い目にあいたいのか」
 博士が近づいてくる気配がして、レイは思い切り顔を背けた。白い首筋には痛々しい鞭の跡。
「いちいち逆らわなければ、そんな目にあわずに済むんだぞ」
 黒い布の下、レイは博士を睨みつけた。小さな胸の中に恐怖と憎悪が入り交じった怒りが渦巻く。
 大っ嫌いだ、お前なんか。
「テストが終わったらまた呼ぶ。ご苦労」
 博士は偉そうに男達に言い、三人は一礼して部屋を出ていった。
 機械音が響く中、博士はレイを椅子に座らせて怪しげな――見えないから余計にそう思える――装置に繋ぎ、“テスト”を始めた。
『お前は普通と違い特殊なんだ』
 博士はいつもそう言う。でも、容姿以外のどこが他人と違うのかレイには全く分からない。
 その“特別な何か”を見つけるために、レイは毎日ここに連れてこられる。機械に繋がれたり、訳の分からない薬を飲まされたりする。それが嫌でたまらない。そのせいで具合が悪くなり、何日も動けない事もある。耐えられない痛みに気を失う時もあった。
 その度にこの男は言う。
『お前は人間じゃない。我々の“道具”なんだ』
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