FAKE‐LAKE
景色を眺めながら、アンジェは湖までの道をゆっくり歩いた。
頭上には針葉樹の深緑や明るい新緑のアーチ。どの緑色も空の青によく映える。
なんて綺麗な色なんだろう、とアンジェは思わず息をついた。
足元に目をやれば、道端に小さな白い花が咲いている。目立たずとも可憐なその花を、じっと見つめているアンジェの顔に柔らかな微笑みが浮かんだ。
ああ、今日の湖はどんな色なんだろう。期待から自然と足が早まった。
アンジェは、自分が見た風景の色をなるべく正確に描くのが好きだ。だから、毎日同じ湖を描いても同じ絵にはならない。
空の色、水面。向こう岸の街、地平線。澄んだ青空、曇り空。季節によって微妙に違う夕焼け。
同じ景色でも、天候や描く時間によって色が違う。
だからなのか、湖の絵は何枚描いても飽きなかった。
いつも絵を描くのは、木陰が日差しをさえぎりアングルも最高の場所。椅子がわりの切り株が自分を待っていてくれているように感じて、アンジェはここに来ると安心出来た。
目印の大木に手を添え、斜面をゆっくりと下りていく。引っ掛からないよう身を低くして最後の枝の下をくぐり抜けると、美しい景色が目の前に広がった。
「今日は、碧(あお)い」
湖を見つめて嬉しそうに呟き、指定席である切り株に目をやったアンジェは、そこに妙なものを見つけた。荷物を木陰に置いて、恐る恐る近付いてみる。
「……人?」
アンジェより幼い少年が、切り株の横に倒れていた。行き倒れているという事実より先に、その少年のいで立ちにアンジェは目を奪われた。
頭上には針葉樹の深緑や明るい新緑のアーチ。どの緑色も空の青によく映える。
なんて綺麗な色なんだろう、とアンジェは思わず息をついた。
足元に目をやれば、道端に小さな白い花が咲いている。目立たずとも可憐なその花を、じっと見つめているアンジェの顔に柔らかな微笑みが浮かんだ。
ああ、今日の湖はどんな色なんだろう。期待から自然と足が早まった。
アンジェは、自分が見た風景の色をなるべく正確に描くのが好きだ。だから、毎日同じ湖を描いても同じ絵にはならない。
空の色、水面。向こう岸の街、地平線。澄んだ青空、曇り空。季節によって微妙に違う夕焼け。
同じ景色でも、天候や描く時間によって色が違う。
だからなのか、湖の絵は何枚描いても飽きなかった。
いつも絵を描くのは、木陰が日差しをさえぎりアングルも最高の場所。椅子がわりの切り株が自分を待っていてくれているように感じて、アンジェはここに来ると安心出来た。
目印の大木に手を添え、斜面をゆっくりと下りていく。引っ掛からないよう身を低くして最後の枝の下をくぐり抜けると、美しい景色が目の前に広がった。
「今日は、碧(あお)い」
湖を見つめて嬉しそうに呟き、指定席である切り株に目をやったアンジェは、そこに妙なものを見つけた。荷物を木陰に置いて、恐る恐る近付いてみる。
「……人?」
アンジェより幼い少年が、切り株の横に倒れていた。行き倒れているという事実より先に、その少年のいで立ちにアンジェは目を奪われた。