先輩
―先輩―

+涼Side+

――…春。
桜が舞うグラウンド。
その中にたくさんの人がいるのに…俺の目には先輩しか写らなかった。

「涼、なーに見てんの?」

入学式が終わって、俺は陸上部の練習を見学していた。
すると、誰かに話かけられた。

「――…愛、」

俺はその声の主が幼なじみだと分かると安堵の表情を浮かべて、そいつの名前を呟いた。

「もう、探した!…涼、やっぱり陸上部にするの?」

愛は頬を膨らましながら俺の隣に座った。
ちなみに今、俺らが座ってるのは陸上部のベンチ。

「あぁ、やっぱ走るの好きだし」
「あたし、マネジやろっかなー?」

愛は俺をまじまじと見つめながらそう言うと俺の反応を待っている。
俺は、特に何も言わずにさっきから見ている先輩をまだ見つめていた。

「綾ーっ!」

遠くから大きな声が聞こえた。
声の方に振り返ると一人の男が(多分三年。)俺が見とれている先輩に向かって手を振っている。
すると先輩は俺達の横を通り過ぎて、その男の元に歩み寄って行った。
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