喫茶ノムラへいらっしゃい!
「いらっしゃいませ。」

毎日夜8時に、私が好きになった人、加藤さんは喫茶ノムラにやって来る。

私はコップに水を注ぎ、加藤さんのもとに持っていく。

「ご注文は?日替わりでいいですよね?」

「うん、ありがとう。」

優しい笑顔で加藤さんが微笑む。

そんな顔で微笑まれたら、仕事に戻りたくなくなっちゃうじゃない。

私は、自分の思いを振り切るようにして、事務的に応えた。

「少々お待ちください。」

奥に入ると、私はお母さんに注文を伝えた。

「日替わり1つ。」

「はいはーい。」

お母さん、機嫌がいいみたい。

さっき、西高の新聞が取材に来てたのと関係あるのかな。

お店に出ると、私と加藤さんの2人きりだった。

「チョコちゃん。」

突然名前を呼ばれて、自分でも恥ずかしくなるくらい驚いてしまった。

「はっ、はい!」

加藤さんがクスクス笑う。

「そんなに驚かなくても。今日のメニューは、何?」

「今日は、ビーフシチューです。寒かったから。」

「いいねぇ、温まりそう。」

「冷めないうちに持ってきますね。」

「ありがとう。」

会話だけ聞いてると、なんか新婚さんみたい。

なんて考えてると、顔がにやけてきた。

ヤバい。

そこへお店に他のお客さんが入ってきたから、私はすぐにそっちのお客さんに対応した。

あーぁ、私、変な子に見えてるだろうな。
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