喫茶ノムラへいらっしゃい!
「私さぁ、昨日、お姉ちゃんに教えてもらったんだ。喫茶ノムラのウワサ、知ってる?」

灯吏が自慢げに話し始める。

私が流行に疎いこと知ってるくせに、そんなこと訊くんだ。

首を横に振って、灯吏に話の先を促す。

「あのね、バレンタインに喫茶ノムラのチョコレートで告白すると上手くいくんだって!」

「ふーん。で?」

「だーかーらー、まだわかんないかなぁ。羽奈さ、山科君に告白しなよ。」

「でもさ、かっちゃんは私のこと、そんなふうに見てないと思うよ。」

「山科君の問題じゃないの!羽奈が好きかどうかだよ。来年は私たち受験だよ?高校はばらばらになっちゃうかもよ?今年がラストチャンスだって。」

「うーん…」

そうこうしているうちに、分かれ道についた。

「じゃあね、羽奈、考えときなよ!」

スタスタ歩いていく灯吏の背中を見ながら、私は小さなため息をついた。
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