黄昏に君と
こんなとこ来なきゃよかった…とさえ思った。
「蛍の池」というくらいだから、もっと神秘的で綺麗な池を想像していたのだが、目の前にある池は、もう辺りが薄暗くなっているのもあり、どちらかというと不気味だ。
こうして突っ立っている間にも、足首の痛みはひどくなっていっている。
この足では、さっきの急な坂は上れないだろう。
「出口を探さないと…。」
顔を上げたとき、初めて池のそばに人がいたことに気がついた。
普通ならおかしい、と思っていただろう。
なぜなら、坂の上には大きな草が生い茂っていたが、ここはそうでもない。
いくら薄暗くなってきたからといって、すぐ近くに人がいることに気づかないはずは無いだろう。
でもそのときは、見知らぬ場所で怪我をし、しかも辺りが暗くなってきているという不安に加え、人がいたという安心感からそこまで深く考えずにオレは人影に声をかけた。
「すみません。この辺の方ですか?」
人影は、そのとき初めてオレの存在に気づいたようで、驚いたようにこっちを振り向いた。
その人影は、女の子だった。
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