妄想科学研究所【短編】
まだヒロシはよく理解出来ない。

理解出来ないって事を分かりやすく表現したいのか首をかしげている。

「歩くって動作は『歩く』でひとつじゃないんですか?」

「もっと細かくだよ」

ドクターは視線の先に手を広げ、指折り数えながら列挙していく。

「右足を一歩踏み出すだけでも…

膝を曲げて股を上げ右足を前へ振り出しつつ重心を前へ移し、右足が接地したら体重をかけ伸ばした左足を…

ああそうだ上半身も遊んでないし…」

「多いですねぇ!」

思わずのけぞってしまうヒロシ。

調子に乗ってきたドクターは両手を広げ、訴えかけるようにまくし立て始めた。

「それだけじゃない!
足の指の動きとか筋肉の働きとか、今は思いつかないような細かい部分までもが同時に動いてるんだよ!

しかもそれらを全部インプットして、コンピューターで制御しなくちゃいけないんだ!

あーもーメンドクサ!
ヤル気なくした!!」
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