リーフのつばさにラヴレター
俺はいきなりされたことに右手が上がったまま停止していて、先生は閉まった窓ごしにヒラヒラ手を振って過ぎ去って行った。



全速力で走った後のようで、ドクドクしている。

全身を落ち着かせようと、ベンチにドサッと座り、右手に残る先生の手の感触と共に、渡された小さな包み紙袋を開けた。





!?




先生いつの間に……!?


アクセサリー屋で先生が他のアクセを見ている時、俺が見ていたシルバーとビーズを使った革紐の携帯ストラップだった。


普通に見ていただけだが、一応高校生、意外に高く、ストラップでこれは出せねぇなと、手に取ってからタグをみてすぐ置いたのを覚えている。


確かにいいなぁと思ってはいたけど……っんだよ!これ。先生……男前だよ。




そういえば、ちょっとトイレ行ってくると言って、10分くらいいない時があったな。あの時は混んでいたと言ってたけど、まさか、その時に買いに行ったんじゃないか。




……にしても今日はいっぱいいっぱいだったし、これは、これでかなり嬉しい。

それに今日、先生の学生時代の頃の話がきけて、俺はその時の時間をかじっただけで距離が縮まった気がした。

勘違いしそうに。
めまいがするように。
まだ寒いのに鼻をくすぐって目頭が熱くなるような、
桜が咲くように。




俺はこのストラップを早速、携帯電話につけて、上にかかげながら見上げた。


そして、先生との今日を胸にしまいつつ、はじの方でモヤッとしたものを抱えながら、俺はやっと眠りについた……。


< 162 / 293 >

この作品をシェア

pagetop