恋 理~renri~
こんな状況では、答えかねて回避しようとするのはムリ――
相手は同じ営業畑であり、私では到底及ばない大和となれば…。
「…電話に出た女性…、だれ…?」
さすがの私も、彼には視線が合致した状態で尋ねる事は出来ないから。
不自然にならない程度で、あくまで控えめに視線を落として疑問を紡げば。
俯いていた私の頬はそっと包まれ、再び容易く瞳が交わってしまった…。
「俺の電話に出たのは、本社勤務の同僚で――
真咲から電話貰った時に、俺は打ち合わせ中だったんだけど…。
たまたまデスクに置き忘れた携帯に、勝手に出たらしいんだ。
メアリー…あ、同僚の名前だけど、ホントにごめんな?」
色んな人に接して来たからこそ、彼の発言がウソではない事は分かる。
「メアリー…さん、日本語話してたよ…?」
フルフルと頭を振りながら、頭の中では許しているのに尋ねてしまった。
「あぁ、彼女は日系人なんだ」
他には?と、まるで促すような表情をされてはもう我慢ならなくて。
「…なんでっ、彼女が出たの…?
なんで私…、“友達”なんて…言ってっ…――」
大和をスッキリ捉えていた筈の視界が歪み、どんどん揺らいでいく…。