恋 理~renri~


隣で見守る大和を一瞥すれば、“言わなくてもいい”といった表情をしているけど。



このまま私だけ押し黙っていて、本当に良いのだろうか…?



亜実にはこのまま素直に育って欲しいと思うのに、自分は仮面をつけて日々を過ごして。



やっと出会えた大切な人…そう大和にも、このままウソをつき通すつもりなんて…。



彼の“いつか話してくれ”という言葉に、今後もただ甘え続けるだけだから・・・




「これから私が話す事は…、本来は墓場まで持っていかなければいけないんです…。

でも今日皆さんにお会い出来て…、このまま隠していたくないと思い直しました。

正直に言ってまだ戸惑う部分もありますけれど、…でも今日を機に断ち切らせて下さい」


ここまでは淡々と紡ぎだしたものの、やっぱり口にしていいのか憚られる私。



「真咲・・・」


「うん、大丈夫…ただ…、どうか此処だけの話にして欲しいんです――」


「分かってる、大丈夫だから」


隣で語りかけてくれる大和に笑顔を向けると、斜め向かいのお父さまを見据えた。



さっきのお父さまからの問い掛けでは、“はい”と肯定する事が許されないもの。




「お父さまの仰る通り、私の父親に当たる人は…――」




“ねーママぁ、どぉして真咲にはパパがいないの?”

“と…突然、どうしたのよ?”

“だってね、ユウタくんやユキちゃんに聞かれるんだもん”


無邪気すぎた幼い私は、ふと疑問をぶつけた際の母の動揺など知る由もなかったね。




「父は…亡くなってはいません、…今も、生きています――」


私に関わるすべてを知らされる、中学生になるまではずっと・・・




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