りんごゆき
10.林檎、雪
私には大好きなものがあった。
嫌いなもののほうが多かったから好きなものは大切にしたかった。
その日私と柊くんは駅前の広場のベンチに座っていた。
秘密基地がなくなってからは路上ライブの回数が増えていた。
路上ライブが終わっても帰らないでおしゃべりしていた。
「かりんさぁ~」
突然柊くんが真面目な顔でこっちを向いた。
「なんで『かりん』になったか知りたくない?」
「知りたい!」
私は即答した。