いらない子メーカー
辞書のページをめくると……

「あった、五里霧中」

これで、埋められなかったマスに字が入る。
調べたついでに、言葉の意味を読んでみる。

――【五里霧中】五里四方に広がる霧。心が迷って、判断がつかなくなること――

心が迷って、判断がつかなくなること、だって。
まるで、今の自分みたい。
霧中、の「中」の字の真ん中を貫く縦線の先が、胸にちくりと刺さったようなかすかな痛み。

思わず目を逸らすと、「五里霧中」の隣に。

――【孤立無援】仲間もなく、助けてくれる人もいないこと。

ふ、ふん。やな辞書だなっ。

果菜は両手で開いていた辞書を、ぱんっ、と音をたてて閉じた。

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