ラスト・メール

れーくんは息をはあはあさせながら走ってきた

「遅い」

「ごめんね、美緒。マジごめん」

「寒かった」

「言うと思って美緒の好きなココア買ってきた」

れーくんのポケットからココアの缶がコロリ

少し…というかかなり冷えてる

「冷たい」

「早く買いすぎたかも」

「バカみたい」

振って飲む

やっぱ冷たい


「やっぱ冷たい」

「早くあったかいとこ行こう?冷えるよ」

「ナンパみたい」

「そうだね。確かに言えてる」

れーくんの手が私の手を握る

冷たい


こっそりと

気付かれないように

私はその手を強く握り返す

れーくん……

探し回ってくれたんだね

バカな私を


素直じゃない私を


ありがと


言えないけど

言わないけど


手をぎゅうっとした



「今日なんかあったの?」

「ないよ」

「電話の声、いつもと違ってた」

れーくんには何でもお見通し。

すごい

「…ちょっと、ね」

「なんかあったらちゃんと言えよ〜」

えらそうに言って、くしゃくしゃ頭を撫でられる


「何さ、れーくんのくせに」

口ではそんなこと言いながら嬉しい私



好きな人がいるって




こんなにも、こんなにも、幸せなんだ



れーくんに伝わってるかな、わたしの気持ち






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