夢のつづき。

◎くまちゃん

その日もさなは朝に一人で起きて奈津子がフライパンを振る台所にきて「ママ、おはよう!」と元気な挨拶をした。


そして「夢でくまちゃんと遊んだの!くまちゃんとね、遊園地に行ったの!」と嬉しそうにさなは言った。


くまちゃんとは2歳の誕生日に買ってあげたくまのぬいぐるみのことだ。


当時のさなよりふたまわり程小さく、さなの一番の仲良しのお友達だった。


買ったばかりの頃、どこかに出掛ける際にさなは「くまちゃんも一緒にいく!!」と駄々をこねることがあり奈津子は辟易した。


ただでさえ小さいさなは何かと手がかかるのに、その上、大きなくまのぬいぐるみなど持って歩くわけにはいかなかった。


10分ほどかけて奈津子は「くまちゃんはお家でお留守番しててもらおうね。」と説得した。


基本的に聞き分けのいいさなはベソをかきながら「くまちゃん、良い子で待っててね。」とくまちゃんの頭をなでた。


さなの聞き分けの良さに奈津子は少し胸が痛んだ。


ある日、帰りがけに寄ったデパートで「くまちゃんにお土産を買ってあげようか?」と奈津子は提案した。


さなは飛び跳ねて喜んでくれた。


そしてくまちゃんに赤いリボンを買って帰り、家についたら真っ先にくまちゃんの元に走った。


本当にさなはくまちゃんが大好きだった。


しかし、一緒には出掛けられない。


しだいにさなはくまちゃんとのお出掛けは諦めるようになった。


出掛けに「くまちゃんも一緒にいく!!」と駄々をこねる事もなくなった。


もちろん、さながくまちゃんと一緒に遊びに行きたい気持ちがあるのは奈津子にも手に取るように解っていた。


< 4 / 19 >

この作品をシェア

pagetop