【長編】Love Step~冷血生徒会長×天然娘の恋愛初心者ステップアップストーリー~
Step1 恋のステップ
中庭の緑も涼を呼ぶ効果のカケラも無いほどに
真夏の太陽が容赦なく照りつけている。

時どき、吹き抜ける熱風さえも一瞬涼しく感じるのは
今日がこの夏一番の暑さを記録した日であるからに違いない。

窓の外は、照りつける太陽が校舎の窓に反射して
角度によっては目を開けていられないほどに眩しい。

本来なら海なりプールなり、友達と遊びに行って、夏休みの楽しい思い出を作っているはずだったのに…。

はあっ、と大きな溜息をひとつ吐いて
机の上の紙切れの山と対峙する。


ブツブツ言いながら電卓を叩くと
先ほど計算したのとは違う数字がはじき出される。


……なんでよ。

3回計算して3回とも違う数字が出てくるってどういうこと?

この電卓壊れているんじゃない?


「だ~!もう嫌!! 
なんであたしがこんなことしなくちゃいけないのよ」

生徒会室で、あたしは一人で今度の文化祭の予算編成の書類を作っていた。

何で会計でも無いあたしが、こんな事しなくちゃいけなくなったんだろう?

そもそも、何であたし、こんな所にいるんだろう?

あたし、蓮見聖良(はすみせいら)は1年生だ。

生徒会に選ばれるのは、普通は2年生以上。

仮に1年で選ばれても後期からだから
夏休み明けの生徒会選挙で新しい会長が選ばれてからだ。

後期の生徒会メンバーは生徒会長によって選ばれる。

だから、もしも選ばれたとしても
本来なら10月以降の後期から就任する形になるはずだ。

そう。
だからそもそも、1年生のあたしが、この夏休みに生徒会室で生徒会の仕事を手伝うなんてありえないはずの話なの。

それなのに・・・。


「蓮見さんできたかな?」

生徒会室のドアを開ける音と同時に冷たい声が部屋に響き渡った。


――でた、冷血男。


この人本当にあたしのこと嫌いなんだなあ。

あたしが夏休みを返上して生徒会室にいる理由。

2-Eの佐々木龍也(ささきたつや)先輩、この人だ。



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