【長編】Sweet Dentist
【第9章】11月5日(土曜日)

あれから3日…。


響先生は亜希さんからの電話で呼び出されていた。
あの後…多分二人は会ったのだと思う。

自分の部屋のベッドで転がりクッションと戯れながらあの夜の事を思い出してみる。

時間は深夜12時を過ぎていた。そんな時間に亜希さんの宿泊先のホテルに出かけていくって言う事は…。

ううん、違うよ。だって亜希さんには聖さんって言う婚約者がいて…。



婚約者…だよね?



亜希さんがアンコールで弾いた切ないピアノの音が胸に蘇る。


あの音は…まだ、胸に響先生を秘めていた。何故そう思うのかはわからないけれど、亜希さんの音を聞いたときそう直感したのを思い出す。

亜希さんは、まだ響先生の事を忘れていないの?

じゃあ、聖さんとの婚約は?

そうよ、亜希さんはあの夜、聖さんに返事をする約束だったはず。



もし…あの電話が聖さんと別れたって言う内容だったら?

もし…もう一度やり直そうっていう流れになったら?



ありえないことではない。

響先生だって亜希さんをずっと心の奥底で忘れられずにいたのだから…。




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