初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★22★☆
『お花
好きなんですか?』

何度か通った時

その日は、年老いた
おばあさんが天国へ
旅立っていった

俺はとっさにかけられた言葉に、息をのんだ

『いや、あの、別に…』

しどろもどろな
答えしか出来なかった

目を合わせる事も
出来ないまま言った

声をかけた事を
都合悪そうにしている
女性がうつむいていた

その場を取り繕うと
何か言葉を探す

『いつも少なくしか
買わなくてすみません』

その女性は顔を上げて
微笑んだ

花に囲まれて笑う
その女性に
引き込まれそうになる

『そんな事ないです。
少なくても、お花は
喜びます』

その女性は俺が買った
たった1本の花を
包みながら、優しい
眼差しのまま、俺を
見つめていた

なぜだろう

この引き込まれそうな
感覚と違和感

もうそんな感情は
二度と生まれないと
思っていたのに

その優しい眼差しは
俺の心を掴んだ

その時には
天国へ旅立った
おばあさんの事さえ
頭にはなかった
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