秋風ゆらり
序章



静かな緊張の中、50歳は過ぎているだろう裁判長の低い声が響く




「………により、極めて悪質な行為であると判断し被告人 吉川昭夫(ヨシカワ アキオ)を懲役16年とする」



どこかですすり泣く声が聞こえる


もう俺には傍聴席の方を伺う気力も権利も無い



半ば引きずられるようになりながら法廷を歩く



背後から沢山の視線を感じたが、それが憐れみの視線なのか軽蔑の視線なのかは分からなかった




前がよく見えない…



それが自分の涙だと気づくのに少し時間がかかった



せめて、一目でもいいから会いたかった…



ごめんな…『――…』…。




ごめんな…『雅人』…。



――――……。
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