【短編】桜花爛漫

あの日の出来事を思い出し、賑やかな花見客を遠目に眺める。

あれから一週間。

随分前のように思えるのは何でだろう。


「本当言うとね……。彼とは大分前から微妙だったんだ」

「えっ? そうだったの?」


驚く七瀬を見て、コクンと頷く。


「それでも私は好きだったから、必死にしがみついていたのかな……。
彼が他に気になる子がいたことも知っていたのに、知らない振りをしていたし」


偶然見てしまった女の子と二人で歩く姿。

長年一緒にいたから、その時の彼の表情を見て感付いてしまったの。

一緒にいてもどこかうわの空だった彼の理由を……。


「ま、あっけなくヒデが終止符うってくれたけどね」


七瀬の顔を見ながら苦笑する。

あの出来事がなければ、いつまでもズルズル続いていたかもしれない。

すれ違う気持ちのまま……。

だから、ヒデには少し感謝している、いるんだけど。


「だけど、やっぱりあのキスはありえない!」




< 13 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop