討竜の剣
第五章
一時間もすると、ナハトは意識を取り戻した。

幸い大事には至らなかったらしい。

それでもフィルナに発見されなければ、俺もナハトもどうなっていたかわからない。

あのまま砂漠の真ん中で干からびていたのか、甲竜を仕留めるつもりが逆に餌にされてミイラ取りがミイラに、の喩え通りになっていたのか。

どちらにせよ、フィルナは命の恩人という事だ。

「本当に…助かった…」

体力の回復したナハトの口からも、フィルナに対して礼が伝えられる。

「そうか、何よりだ」

木の幹にもたれかかり、腕組みをしたままフィルナが微かに笑みを浮かべる。

エルフには美男美女が多い。

端正な顔立ちは、フーガの民とどちらが上かと言わんばかりだ。

その顔立ちで微笑など浮かべられては、思わず視線を釘付けにして見惚れてしまう。

それに何を感じたのか。

「いてっ?」

ナハトが俺の頬をつねった。

そんなやり取りを見ながら。

「お前達」

フィルナが口を開く。

「あんな砂漠の真ん中で何をしていた?フーガに向かっていたにしては方角が違う」


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