Melty Kiss 恋に溺れて
2.大嫌いなアイツと喋る
コンコン

部屋の扉をノックされる音で、目が覚めた。


あれからすぐに大雅のところに、秘書的役割をしている部下から電話があったのだ。
いい加減、会議に戻って来てください、という内容だった。

大雅は仕方が無く、私の部屋から出て行った。

疲れ果てた私は、着替えるだけ着替えて、どうやら机に伏せて寝てしまっていたらしい。

開けっ放しのカーテンの向こうは、真っ暗になっていた。

「はーい」

私は返事して、部屋の電気を点け、ドアを開けた。

「はぁい、マイドーター、元気にしてた?」

と。

ドアを開けた瞬間、父親が甘いマスクで微笑んでいた。

思わず、ドアを閉めようかと思ったが、そこは父親の方が上手。
上手いこと身体を滑らせて、部屋の中へと入ってくる。

高校入学式に出てくれて、その後ずっと行方知れずだった男だ。
娘に恨まれても文句は言えまい、と思うのだが。
当の本人は、無邪気なほどににこにこしている。

ジゴロという言葉がぴったりの、どうしようもない女ったらしぶりが身体のあちこちから痛いほどに滲み出ていた。

本当に私に義理の兄弟が居ないのかと、不思議に思ってしまうほどだ。


「お陰さまで、元気にしてましたともっ」

私はつっけんどんに言い返すのが精一杯。
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