Melty Kiss 恋に溺れて
「はぁ、面倒くさいな。
お前ら、本当に若者か?」

黙って思考を巡らせている俺に痺れを切らしたのか。
紫馬さんは、髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜて、声を荒げた。

「列記とした若者ですけど、紫馬さんの自由奔放ぶりは真似できません」

にやり、と。
極上の笑みを紫馬さんが浮かべる。

「真似なんてしなくていいんだよ、若人(わこうど)。
ま、俺なら今すぐ風呂に行って都を押し倒すけどね。
あんな気の強い態度取ってるけど、彼女絶対マゾだから。こう、強引に責めるとかなり良い声で鳴いてくれると思うよ~」

さらりとろくでもないことを言ってのけるところが、この人の怖いところだ。
愛娘に対して常々、どんな視線を向けているのだろうか。

心の底から、都さんがこの男の真の娘で良かったと思う瞬間。

義理の娘なら、間違いなくこの男の毒牙にかかっているはずだ。気の毒に。


それからもしばらくぐだぐだと。
紫馬さんは、役に立ちそうなこととろくでもないことを半々くらい、とうとうと喋り続けていた。
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