Melty Kiss 恋に溺れて
「だって」

私はそんな自分の恋心をあえて封印したかのように、反抗的に視線を上げる。
そこらの俳優よりもずっとかっこいい大雅のルックスに、跳ねる心臓を強引に押さえて唇を尖らせる。

「銀組(しろがねぐみ)のシマで麻薬売ってたんだよ?
そんなの許せないでしょう?」

――銀組、それは関東一円のヤクザを束ねる暴力団の名前である。

大雅はその組の現総長の長男であり、次にこの組を継ぐ者であるのだ。
つまり、「次期総長」。

そんな彼を幼い頃から知っている私も、もちろんこの組の関係者。

父が、この銀組の若頭なのである。
父、紫馬 宗太(しばそうた)は、医師免許を持っておりこの組のためだけにその技術と知識を利用していた。

ちなみに、両親は離婚しているのか結婚していないのか定かではないのだが、母の姓が八色(やしき)と言い、最終的に私を「組の関係者」にしたくない父は、頑なに私に母の姓を名乗らせている。

ので。
私の名前は、八色都と言う。
都内の私立女子高に通う、高校生。


そして。
しつこいけれど、この、かっこよくってめちゃくちゃ強い大雅のことが大好きなのだ。

ふぅ、と。
無敵のはずの大雅の瞳に心配そうな翳が浮かぶ。

「そういう時は、すぐに私に連絡して下さい。
都さんからの電話だけはいつだって出ると言っているでしょう?」

大雅は私に、ものすごく甘いのだ。


だけど、これにはちゃんと理由がある。
< 4 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop