世界から
そして始まりは
酷く倦怠感を覚える朝だった。どうにも体が重くてベッドから起き上がるのも億劫だ。

半身だけ起こして窓のカーテンを開けてみる。雨が降っていた。強いわけではないが、弱いわけでもない。全く雨というのは本当に鬱になる。今日が週明けの月曜だというのだから尚更気分が悪い。

それでも学校に行かねばならないので仕方が無く、本当に仕方が無くこの普段の倍近くに感じる重さのこの体を起こし、顔を洗い、朝食をとり、歯を磨き、着替え、そして学校に向かう。

歯を磨いているとき、少々気だるかった。もしかしたら風邪の初期症状か何かかもしれない。放っておけば治るかもしれない。いや、でもそうでないかもしれない。これは休んだほうがいいのでは・・・?

本能的な“休みたい”という衝動に、理性で理由という衣服を着せていく自分が何とも浅はかに思えてきた。普段なら一度そういう考えが過ぎるとほぼ確実にサボりルートに進んでいたが、今回は何かあったのか学校に“行きたい”と思っている自分が居た。


思えばこれが最初だったのかもしれない。だが、そうでないのかもしれない。本当にただの偶然だったのかも知れないが、今では知る術もないし、知る必要も無いし、知りたいとも思わない。


「行って来ます」
普段は少し慌てて家を飛び出していくが、何故か今日はいつもより5分ほど家を出るのが早かった。起きるのが早かったわけではない、それどころかいつもより7分も遅かった。朝の7分は貴重な時間だ、その遅れが致命的になることはよくある。

「おはよう、シオン」
玄関の目の前に、傘をさした少年が一人立っていた。玄関を開けてそのままの状態だったシオンと呼ばれた少年は、「あ」と一言だけ言ったあと、そこから一歩も前に出ることなくまた玄関を閉めた。


その数秒後、シオンは傘を片手に少し気まずそうな顔をして玄関前の少年に一言、
「予報ではすぐ止むって」
言った途端に雨足が強くなった。シオンは何も言わず、傘を開いた。

「いいか、リク。絶対アイツには言うなよ。言ったらお前に48の殺人技を喰らわしてやる」
シオンがリクと呼んだその少年は、にやにや笑いながら
「うん、いいよ。姉さんにはシオンが朝っぱらからテンパってたのは・・・黙っておいてあげる」

妙な間が気になった。
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