世界から
束の間の、日常

その日から何日か経って、また普通の日常がやってきた
ほんの数時間の出来事だったが、随分と長い間異世界に居たような気がした

“歪み”が元通りになると、リクや俺のように何らかの能力を持つ人間以外は、それまで起こった異常な出来事を全て忘れてしまうらしい
学校で起こったことも、ソラや他の生徒たちは覚えていないようだった


俺の能力については、リクもよく分からないと言っていた
あの時黒マントのカマイタチが目の前でかき消されたのが、俺の能力と関係あるのだろうか
それとは別に、視力や動体視力、洞察力など、眼に関する力が異様に高くなったのも気になる


俺はロゼさんのあの悲しそうな表情が、引っかかって仕方が無かった

殺された部下の人たちの敵を討って、満足していたようには見えなかった
もしかしたら始めからあの人は・・・


「シオン、ちょっと・・・いい?」

リクが話しかけてきた。今現在、二人は屋上で購買で買ったパンを食べている
ソラは生徒会で何やら仕事があるそうで、今回は居なかった

「シオンのアレ・・・能力について、思うんだけど」
「どう、思うんだ」
「たぶんあれは・・・相手の能力の無力化、じゃないかな」
「何でそう思ったんだ?」
「シオンさ、魔法とか超能力だとかそういう類の話って全然信じてなかったでしょ」

まあ、ガキの頃からそういうものを一切信じない、夢の無い少年だったな、俺は

「それで思ったんだけど、シオンはあの黒マントの能力を“在り得ない”って強く思い込んでいたんだよ、無意識的にかも知れないけど」

そういえば、能力の内容は本人の性格とかに依存するそうだったな

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