クライシス
第二章

アクシデント

潜入
十二月二十五日十四時二十五分大阪府南部上空
雄介を乗せたヘリは南に向かう。ヘリの窓から、ぼんやりと雪が舞い降りる大阪の街を見ていた。
ふと気が付くとヘリがもう一機、雄介のヘリの隣に並んだ。向こうのヘリの窓に二谷と三宅が乗っている。二人が手を振っていた。
「コチラをどうぞ。盗聴は出来ない様に成っています」
そう言ってヘリの副操縦士がイヤホンマイクを渡して来た。雄介はそのイヤホンマイクを装着する。
『聞こえるか?』
そう言って来たのは隣のヘリに乗る二谷であった。
「感度良好・・・どうぞ」
雄介が答える。
『お姫様との別れを急がして済まない』
見ると二谷がニヤけている。
「任務っスから」
雄介は少しむくれて言う。
『そうか。なら良し。とりあえず、作戦のおさらいをする、良いか?』
「どうぞ」
雄介の顔に少し緊張が戻った。
『まず俺達、三人は別々の便と航路からアメリカに渡る。お前はロス、三宅はニューヨーク、俺はワシントンだ』
雄介が頷く。
『そして、それぞれ向こうのCIAのエージェントから偽造パスポートを貰う。そして俺達は中国系のイギリス人に早変わりだ』
ヘリは和泉市の上空を越えた。
向かうのは関西空港だ。

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