クライシス
楠木は再び語り始める。


「これは人工的に作られた物です・・・兵器としてね・・・元々は1963年に旧ソ連が・・・」


そこまで言った時に楠木は言葉を止める。


「まあ、講義では有りませんので歴史は置いておきましょう」


そう言って笑った。


「行けませんな・・・歳を取るとつい、話しが長くなる・・・フォフォフォ・・」


楠木はコーヒーを飲む。


「教授・・・」


桜井が我に返り、楠木を呼んだ。


「はい」


「打つ手は・・・無いのですか・・・?」


「有りますよ」


その言葉に全員が楠木を見た。


「ワクチンです」


楠木の言葉で全員に顔に生気が戻った。


「そうか!ワクチンだ!」


「それを作れば問題無い!」


「早速、厚生省を総動員しましょう!」


口々に騒ぎ出した。


「お待ちなさい」


ざわめきの中、再び楠木が言った。


「もちろん、人の手で作られたウイルスは必ず殺せます・・・兵器として使う以上・・・それは問題無い・・・」


楠木はコーヒーを飲み干すと秘書官に告げた。


「もう一杯頂いてもよろしいかな?」


秘書官が慌ててコーヒーのお代わりを命じた。


「いや、流石は総理官邸のコーヒーだ・・・豆が違いますな・・・フォフォフォ」

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