変わらないコーヒーの味
5 真実は隠せない
その二つの物が、たった一つの俺の行動で全てを壊してしまった事を気づかせた。


誰がチケットを手にしたまま、映画館以外に出掛けるのだろうか。

逆に、誰が映画館に向かう途中からチケットを出すのだろうか。

何よりもチケットに記載された発行時間が…


美紀が事故にあった数分前だなんて。



美紀は、見たのだ。

俺と早紀が一緒にいるところを。


「あの、すいません…携帯電話はお切り下さい。」


一人の救急隊員の声ではっと我に返ると、聞こえるのは聞き慣れた着信音。


「わっ、すいません!」


ディスプレイに出ていた名前は、早紀…。


電話に出る事なく、そのまま俺は電源を切った。
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