ーキミノイナイセカイヘー
しかし、医師は何も答えず歩きだした。


「なぁ、金か!?金があれば助かんのかっ??それなら俺が後から幾らでも持ってくるから。死なせないでくれよー!!!もぅ、大事な奴を失くしたくないんだよぉ」

見苦しい程に取り乱すナツ。

しかし、その切願に医師は答えることはなかった。



二時間後


コヤジの変形した顔を見つめるナツ。

蒼白い唇にさっき買ってきたワンカップを注ぐ。


「呑めよ、お前の好きなやつだぞ。ほら、まだいっぱい有んぞ!?遠慮せず沢山呑めよ」


それを見た母親が

「もぅ止めてナツ君。こうじはもぅ喋らないの。もぅ笑わないの。もぅ息をしてないの。もぅ死んじゃったのよぉ」


コヤジの口から溢れていく酒が枕に染み込んでいく。


(まさか、この酒が死に水になるなんて......)


また1人、ナツを置いて黄泉へと旅立った。




(誰も守れないのか?)



(もぅ少し早ければ死なずにすんだのでは?)


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