君への距離~あなたに一番近い場所~
ガチャガチャ!





「翼ぁー!」


玄関からドアを開ける音とシオの声が聞こえてきた。




翼がハッと我にかえって部屋を出ていった。



玄関には杏をおぶったシオがいた。



「お届けもん!」

シオがニヤッと笑って言った。



杏がシオの背中からひょっこり顔を出して翼にニヤッと笑った。


杏の笑顔に翼はホッとした。

「重い重い!どんどん重くなっていく~」

シオは大げさに顔をしかめて言う。



「あたしはこなきじじいか!!」



「暴れんなや!コラ!足ぬけてんだろ?」




「膝、ね…」

翼は苦笑いだ。





「ほら、翼!交代!」


シオはそういって杏を翼に背負わせる。


「落とすなよ!」

翼の肩をポンポンと叩き、シオは出ていった。






「やっぱさ…、」
翼がつぶやく。


「やっぱ、シオかっこいいな!」


「ん?」
杏が首をかしげる。

「あ…えっと、なんでもない!」




慌てる翼を見て、杏はニヤニヤしながら言った。


「リョースケが妬いちゃうぞっ☆」




「この―!!」

翼は杏を背負ったままぐるぐる回った。




「キャー!!!」



翼の背中で杏はいつまでもケラケラ笑っていた。





< 137 / 152 >

この作品をシェア

pagetop