蜜事中の愛してるなんて信じない
注目!! 今度こそ、私の勝ちね

「おい、コーヒー」

 声がしたソファーに目を向ければ、足を組んだその膝の上に本を置き、黒いマグカップをこちらに突き出している正志の姿が目に入った。
 視線は、本に落としたまま。

 失礼なやつ。

 でも、仕方ない。コーヒーは私の管轄で。
 私は電気ケトルのスイッチを押し、正志からマグカップを受け取って隣に腰を下ろした。

「何読んでるの?」

「タイトル言って、お前がわかるか?」

「わからない自信、あるね。でも、聞きたい」

「お前のその、無謀なチャレンジ精神嫌いじゃないけどな」

 ふん。私が聞きたいのは『嫌いじゃない』なんて遠回りなかんじじゃななくて、もっと直球な――。

「温暖化」

 そう、温暖化。もっと体温が上昇して、心拍数が急上昇する……って違うわ!!
 頭の中で一人ノリツッコミをしてる私ってかなり末期かもしれない。

「……正志が研究してる管轄ね」

 『管轄』ってフレーズのマイブームになりつつあるそう。きっとさっきの思い出の中でアオシマ刑事が出てきたせいかもしれない。

「あれ、CO2が原因だってことになってるだろ?」

「らしいね」

「それに異を唱える輩が出始めたんだよ」

 キッチンカウンターのケトルが私を呼ぶ。

 サーバーにドリッパーを乗せ、接着部を折ったフィルターを装着する。

「へえ。国会の野次みたい」

 正志に背中を向けたまま、意見する。 

 



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