蜜事中の愛してるなんて信じない

 また、何故、を考えたら、うん。じりじりと苛苛が増してきたぞ。

「ん」

 単行本に視線を走らせる正志に、いれたてのコーヒーがたぷりとゆれるマグカップをつきつける。

 私を見上げて、目尻に浅いシワをつくった。同時に口角が引き締まるように上がる。

「さんきゅ」

 一言、そう告げてから、マグを受け取る。

 か、可愛いじゃないか。その笑顔。

 私は、口元が緩んでしまったことを悟られまいともう一方の手に持ったウサちゃんマグに口をつけた。
 そういう笑顔を不意打ちでしてくるから、好きって気持ちが途切れないのかもしれない。

 もしかして、この笑顔、正志の頭脳プレイによる策略なのだろうか。
 頭の弱い私は、それでもまんまと嵌るわけだが。

 ダイニングテーブルに目をやると、A4の白紙が2枚。
 おお、作戦続行だ。

 先ほどから、ずっと蓋が開けっ放しだった炊飯器に駆け寄り、中の様子を覗く。

 ありゃりゃ、表面がかたまりかけてる。

 しゃもじでかき混ぜで小皿に十粒ほど移す。
 今度こそ、炊飯器の蓋を閉めて、作業開始。

 紙を縦長になるようにテーブルに置いて、上部一センチ程に……。

 ぐにぃー。
 ぐにぃー。

 ご飯をこすり付ける。
 その部分に、もう一枚の下部一センチを重ね合わせて、糊付け完成。

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