∞いちしのはな∞

「今日もおはよう。イツキ」

「おはよ…」


しどろもどろと一人慌てていても彼女は大きな欠伸で涙を滲ませ
ぺたぺたと去って行く。

今日も出かけるの?

聞きたいのに聞けない。
じめったい自分を呪う。

昔から、だ。
僕はいつもすぐ物おじして立ちすくんで、なかった事にする。
こんな僕を彼女は「イツキは失敗しない人」と皮肉めいて褒める。



背中の後ろから、ばたーん、と冷蔵庫が閉まる音がして彼女はゴクゴク喉を鳴らしてる。
< 45 / 66 >

この作品をシェア

pagetop