Bizarre Witch~猟奇的な魔女~
女は呟く様にぼそぼそと言っていたのでほとんど聞き取れなかったが、最後の方に始末するとか言う物騒な単語を発したのを聞いた。


急に身の危険を感じ始める俺。


「あの?ちょっと、どうしたんですか?急に深刻になって」


俺の足は既に後ずさりを始めていた。


そして、ゆらりと何かを決意したかのような表情で立ち上がる女。


いやっ、もうこの女は女であってそうでは無い。


……そう、……魔女だっ。


「よくも私の大事な‘‘物’’を奪ってくれたわね。この悪魔っ。どれだけ人の形を模したとしても悪魔は悪魔。人間は私に触れられない、見えない。しかし、一見人間に見えるお前は私が見えるし、触れもした」


いつの間にか腰が抜け床に座り込んでしまった俺は何か得たいの知れない相手から逃れるように後退する。


女はゆっくりと右手を自分の目線に上げ、そして、クッと何かを握る。


「つまりお前は人間では無い」


人格を、存在を否定されてしまった。なのに口から出る言葉は無い。生まれて初めて味わう恐怖だ。


「お前がどれだけ経験値を貯めたか知らないが、喰った直後らしいわね。全く殺気を感じない。一方的なのは好みじゃないけど、今の私は相当気が立ってる。ごめんね」


女は中空で握っていた拳を最初はゆっくりとしかし後半は目にも留まらぬ速さで引いた。


愕然とした。次の瞬間、女が手に持っていたのは全身真っ黒な棒。……いや、エモノだった。柄もつばも無い、ただ刃のみのそれ。不完全なように見えて、反面、今までに感じたことも無いような禍々しさを放っている。それをまるで手品のように空中から出して見せた。


殺される。


そう思った。


俺は無駄なことと知りつつ、両手で壁を作った。


「…………お前、本当に悪魔?」


と、そんな怯える俺に女は何かを疑問に感じたようだ。依然漆黒のエモノは構えたままだが、俺に発言権を与えてくれた。

< 13 / 42 >

この作品をシェア

pagetop