Bizarre Witch~猟奇的な魔女~
「まぁ、簡単に言えば、この世界の秩序を護る異世界の守護者、ってとこかしら」


一瞬の間を置いて、俺は思わず吹き出してしまった。アメリアのその発言はさっきの死の恐怖を感じていた俺を笑わせるほどの馬鹿馬鹿しいものだった。


「なによ?」


アメリアは表情を変えることなく、まだ手に持っていた刃を握り直す。


たったその少しの仕草で俺の顔面からは再び血の気は失せた。


「いや、すいません。……ただ、そのアメリアさんが言っていることが余りにも非現実的だったので」


男として情けない。さっきから謝ってばかりだ。だが相手は凶器を持っているから下手に出られない。


「これだから人間っていうのは……アンタね、アンタはこの世の全てを知っているとでも言うの?たかだか10数年しか生きていないお子様に非現実だとか言われるとは思ってもみなかったわ。爪の先ほども無い常識の範疇で物事を判断しないで」


確かに言っている事は分かる。だが、他人の家に深夜に忍び込み、手品で凶器を出して、俺を殺そうとした次の瞬間に私は、異世界から来た守護者です、なんて話を誰が信じるものか。


「人間っていう生き物は、自分の理解できない現象が起きると、超常現象とか超能力だとか、霊の仕業だとか。挙句の果てにそれらを自分の生業にしているバカがいる始末。ほんと、呆れるわ」


散々暴言を吐いたと思うと、アメリアは一息吐く。


そういえばこれだけアメリアが大声で怒鳴り散らしていたにも関わらず、誰一人として起きて来ないのに違和感を覚えた。
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