執事の憂鬱(Melty Kiss)
13.天使の助言
『ぱぁぱっ』

突然、ドアが開いて清水はびっくりした。
紫馬は気配でも感じていたのか。
父親の笑顔で微笑むと、椅子から立ち上がって息を切らしている愛娘を抱き上げた。

『こんな夜中に起きてどうしたの?』

『どうもこうも!』

そういって、都は無理矢理父親の腕から抜け出そうとする。
そうして、その動作の途中で、テーブルの向かいに未だパジャマ姿のままで座っている清水を見て、ほっと胸を撫で下ろした。

『あ、おじさん無事だったんだっ』

『……都ちゃん?
パパよりも、そんなにヒデさんの方が気になるの?』

ついに、パパよりも好きな男が出来ちゃったのね、と。
淋しげに呟いて、紫馬は都を床におろす。

都はこくりと、大きく頷いた。

開けっ放してあるドアから、大雅がゆったりとした足取りで入って、優雅な仕草で扉を閉める

それも気にせずに都は無邪気に口を開く。

『だぁって、おじさんはパパの大事なお友達なんだよね?
パパのお友達、他に見たことがないもの。
だから、みやちゃん大事にするのっ』

えっへん、と。
都は得意げに胸を張る。

大雅は無表情のままに、心の中で軽い嫉妬に疼いていた自分を責め、紫馬は喜んで愛娘を再び抱き上げ、余計に都に嫌な顔をされていた。
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