執事の憂鬱(Melty Kiss)
15.日はまた昇る
――翌日、朝10時。

清水が一人、広いリビングでコーヒー片手に新聞を読んでいると、

「たっだいま~っ。あ、清水さんっ」

ぴょんぴょんと、ウサギのようにご機嫌に八色都が歩いてきた。
青いワンピースが、よく似合っていた。

あまりにも無邪気に顔を覗き込まれ、清水の方が何故だかどぎまぎしてしまう。

「お帰りなさい、都さん。
次期総長は?」

聞いた途端、都が膨れた。

「大雅?
知らないっ。
お仕事なんじゃないの?」

清水は首を捻る。

「昨夜は、その一緒に」

言い出してはっとした。
何を確認しようとしているのだろうか。

思わず赤面しそうになるが、都の方は膨れたままで赤面する様子すらない。

「ねぇ、清水さん。
私は、バージンロードをバージンで歩きたいの。
分かる?
そういう、女の子の憧れっ」

それどころか、すごい剣幕で話しかけてきた。

「……はぁ」

なんと言ったらよいのやら。
清水は返答につまり、眉間に皺を寄せる。
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