[短]Chocolate~From Bitter~
かすかに揺れるベンチが、彼が隣に座ったのだと教えてくれる。
私は彼には視線を向けようとはせずに、わずかな可能性を信じ、辺りを見渡した。
誰もいない。
つまり、この男は、私に声をかけている。
その結果にたどり着くまで、私はしばらくの時間を費やしてしまった。
やっと思考が追いついたとき、突然視界の中に手が忍び込んでくる。
『ちょーだい』
いきなりのびてきた手が、私の手元にある箱をあっさりと奪っていく。