ワンサイド フィルム
2.ひとり

「先輩たち、あの映画見にいったんですかぁー!」

映画館を出て、大学に帰ってきた。

私、雨宮、立川は同じサークルで、今はそのサークルの部室にいる。

後輩たちが、雨宮の買ってきたあの映画のパンフを「きゃいきゃい」言いながら見ている。

「てか、先輩たち授業いーんすか?」

「本当は4限間に合うハズだったんだけどさぁ…。」

渋谷の映画館を出て、私がファッション雑誌のスタッフに捕まったのが原因だった。

けっこうしつこくて巻くのに苦労したのだ。

「さすが、美咲センパイっすね!カッコよすぎっす!!」

「今日もオシャレ~」

後輩たちにおだてられ、少しこそばゆくなりながらも、私は笑う。

「で、そのあと駅前で美容師にもつかまって…、」

「だから、悪かったって!」

元々、着るものには気をつかってた。
でも、本当に負けたくないと思い始めたのは、来夏と出会ったせいだってこと、みんなは知らない。



「この間、合コン行ったときも、全部美咲にもっていかれたもーん。」

「でも美咲さんなら、それでもいいかな、って私思います。」

「でも、そのくせ、男に興味ないもんなぁー」

すると、雨宮に顔を近づけられた。

「ひょっとして、美咲レズっこ?」

「まさか。別に男に興味がないわけじゃないよ。」

「美咲モテんのにね。」

「まあ、付き合うだけが全てじゃないっしょ。」

また笑って、心と裏腹のウソをつく。

そういえば、コレは来夏が言ってた言葉だったかも。
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