アリと王女

旅立つ時






辺りは真っ暗だった。



当たり前だけど、王様はもう居なくなっていた。


一瞬、あれは夢だったのかもしれないと思ったがやっぱり違う。



だって、まだ鳥肌がたっているし、悪寒がしている。



動物に触れたりしたときの、いわゆる後遺症みたいなものだ。




それに加えて、覚えているのは、王様のプロポーズと魔法のことだけー


『……ん?魔法って?』


王様はわたしに魔法を預けるとかって言ってたわよね?




わたしの思考回路が高速で回る。




ーそして、ある事が浮かんだ



『…わたしは魔法を使えるってこと??』



それならかなり凄い。


そう思うだけで、メルヘンな感覚がした。



ーまぁ、大抵の人は動物と話せるだけでメルヘン~って思っちゃうんだろうけど。
…わたしを除いて




『でも、もし本当に使えるなら使ってみたい…』


わたしは側にあった岩の上に座った。



ひんやりとした冷たさが気持ちいい。



魔法…
そうね、お腹空いちゃったし…



『食べるもの、出てこい!』





ー反応無しだ



『あれ?おかしいわね』


手をふっても、指を鳴らしてもなんにも変わらない。



『もしかしたら、何か呪文があるのかしら…』



ーなら、あれしかない!



『開けゴマ!食べ物出てこい!ナムナム~』




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