あなたの笑顔
《新しい生活》
 流産をきっかけに勤めに出た。
簡単な事務だった。
そこへ来る業者が学生時代からの
知人の佐々木さんだった。

 「再会を機に
またあの頃の仲間と呑もうか。」
 
 「そうね。」
と返事をしたもののあまり乗る気ではなかった。

 “流産”は私にとっては、辛い事だった。
でも夫は、呑気で、腹が立っていた。
さらに慣れない仕事と家事の両立が、
二人の関係を悪くしていた。

 「何偉そうに言ってるんだ。
 別に俺一人の収入でも
 食っていけるだろ。
 それを好き好んで、
 勤めたいと言ったんだから、
 今まで通り、きちんと家事をしろ。」

そう言われると、確かにそうだ。

 産婦人科の先生には、
 「若いのだから、
 心配なく次はきっと出産出来ますよ。」
と言われていたが、
家に一人でいる時間が長いと
寂しくて、不安でたまらなくなった。

 そんな気持ちで、
勤めを始めたのだった。

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