恋人未満

で、その翌朝、つまりは土曜の朝7時ちょっと前。

目を覚ましたあたしは手早く着替えて隣家に向かう。

敷地面積も家そのものの大きさも、うちと大差ない、新の家。

ただし、三人家族のうちと違って、新はひとりきりで暮らしてる。

だから、あたしが面倒を看なきゃならないというわけ。

こんな時間帯に新が起きてるわけもないので、あたしはドアフォンを鳴らすなんて無駄な行動には出なかった。

さっき家の鍵を閉めるのに使った鍵と並んでぶら下がってる、ほんの少し形と大きさが違う鍵を、そのまま差し込んで開けてやる。

「おはよう!
 入るわよー!」

なんて、一応声はかけてみるけど、まあ、完全に無駄よね、無駄。

だって、それくらいで新が起きるわけないし。

あたしはまず新を起こすんじゃなくて、洗面所に向かった。

浴室と洗面台の間に挟まりこんでいるような洗濯機に洗い物を放り込むべく、洗濯籠を確かめる。

昨日、一応仕分けておいたけれど、あたしがいない間に新がろくでもないことをしている可能性もないわけじゃないからだ。

実際、一度白いシャツの中に一枚だけ濃い色のTシャツが紛れ込んでて酷い目に遭いかけたことがあるし。

今日はとりあえず大丈夫そうだとほっとしながら、洗濯機を回し始める。

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