風になったアナタへ
1996年・冬 (リンとの別れまで残り約1年8ヶ月)

~リンの誕生日は無い~

出逢ったばかりの頃に、リンに尋ねられて答えた私の誕生日を、彼女は当然のように覚えていた。

リンは誰よりも早くにカードとプレゼントをくれた。私が好きだと言った、懐かしい味がする白胡麻のアメと、銀色の缶に入った青いアロマキャンドル。カードには、

『あなたに出会えて良かった』

と書いてあった。同じ言葉をリンにも返したかったが、私は気恥ずかしくて言えなかった。

「有り難う。ねえ、あなたの誕生日はいつなの?」
 彼女は一瞬沈黙した。

「私、誕生日は無いの」

「え? 今、なんて言った?」
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