風になったアナタへ
1998年7月25日 (リンの死後8日)

~リンとの別れ~

空を見上げると、大きくて真っ白な雲達が穏やかな風に身を委ねていた。空気は乾いていて、外へ出るとアスファルトの匂いがした。

案内状を片手に辿り着いた場所は、閑静な住宅街に厳かに佇む教会。

リンの母親であるパトリシアは、真っ赤なロングのワンピースを着ていた。リンの二人の兄は揃ってジーパンにTシャツを着ていた。リンの父親はスーツの上着を脱ぎ、ワイシャツの袖を腕まくりしていた。私は、今日の日のために買った黒のワンピースを着ていた。主役のリンは愛犬を抱きしめて、参列者に向かって写真の中で笑っている。
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