雪花
『俺、少しは雪華の心に入れたんかな?
少しは、心開いてくれたんかな?

正直に言うと、一目惚れやったんや。

だから、いつも一人でいる雪華の心に入りたかった。


最後の日、わがまま言うてごめんな?
どうしても最後に、二人で雪花を見たかったんや。ゴミちゃうで!

入学式に見た、桜の花びらが舞い散る中の雪華をもう一度、見たかった。


でも、雪華の照れた顔見て、俺、少しうぬぼれてもええんかな?って思ったわ。

雪華にあんな顔させたの俺だけやろ?



俺は大丈夫やから、雪華もがんばれ。


最後まで、読んでくれてありがとう。


じゃあ、またな。


      相馬潤 』


「…うぬぼれんな、バーカ」

 受け取る相手のいない呟きは、澄んだ青い空に吸い込まれていった。

 強がってみたけど、心は正直で涙が溢れてきた。

「…ウッ、ウゥ…」


 相馬は、バカだ。
 なんで、私の応援なんかしてんの。





ーーキーンコーン、カーンコーン


「ヤバッ、午前中サボっちゃった…」

 いつまでも、ここにはいられない。
 教室に戻らないと。



「相馬こそ、がんばれよ」

 遠くの空に向かって呟いて、屋上を後にした。







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