猫と君

夕日




数日後―――。


黒い服の人々が
次々に葵にお辞儀をしていく。

今、
広田夫妻の葬儀が行われている。




「…かわいそうに、祖父母の方も
もういないんですって…」


「…そうなの?…お気の毒に…」


「…娘さんはまだ高校生って言うし…」


「…かわいそうに…」



あちこちからこそこそと
葵への同情の声が聞こえてくる。


俺にはうるさい雑音でしかなかった。



何も知らないくせに…
そんな言葉、葵は望んでねぇよ…



のどの奥の方が
なんだか苦しくなった。




< 21 / 32 >

この作品をシェア

pagetop